【レポート】世界的なパンデミックが及ぼすアメリカでの運動習慣の変化(Part 1)
3月中旬、ちょうど13日の金曜日に、アメリカ国民は非常事態宣言のニュースと共に目が覚めたという。CDC(Centers for Disease Control and Prevention)は、日曜までに予定されている50以上もの集会に対し、中止の勧告を出した。ガーミンユーザーから得られた100万件ものアクティビティトラッキングデータによると、3月中旬のこの運命の週末こそが、人々の活動に大きな変革をもたらす分岐点であった。
アメリカ政府及び各地域の政府による外出自粛宣言の影響で、ガーミンデータ上でも、3月の第2週に全体の歩数が大きく減っていることが見て取れた。これはさほど驚くべきことではない。これは明快な「原因と結果」に基づく動きであり、中国やイタリア、その他パンデミックの脅威にさらされた国などで見て取れる世界的な傾向と一致している。
この世界的な歩数の減少でも表層的な現状を汲んでとれるが、ガーミンデバイスから得られる100万件のデータから導き出される最新の分析では、このパンデミックが人々の活動習慣にどのような影響を与えているかより深い理解を得られるはずだ。人々が実際に何をしているか、アクティビティの顕著な変化を観察することで、従来の春のエクササイズやアクティビティの傾向に対し、前例のない動きが反映されていることが確認できる。
初期の状況の全体像を把握するために、ガーミンのエンジニアとアナリストは、アメリカ国内で起こる、特定のスポーツやエクササイズにおけるアクティビティ量の変化を、3月の前後半で比較し増減を導き出した。尚、より明確な数字を出すたに、2019年同時期をベースとして結論を出している。
世界共通のウインタースポーツであるリゾートスキーやスノーボードは、週末の従来の曲線ピークが突如消え、驚異の-96%の減少を記録した。これは現実世界の肌感覚と一致していて、コロラド州やユタ州など人気のスポットが一晩で閉鎖となったため、多くの人が春休みの計画を断念せざるを得なくなった。
スキーヤーが山を離れざるを得ない一方で、サイクリストは、ルーティンを継続するために、ホームジムでペダルを動かす動きが見られた。バーチャルサイクリングは3月後半にかけて64%増加し、昨年同時期と比較して異常ともいえる極端な変化が確認された。2019年3月を見ると、サイクリスト達はこの時期、暖かい春の気候を楽しむかのように外に出はじめるため、インドアサイクリングが-20%減少している。
あまり一般的でないスポーツに勤しむ人や毎日のルーティンを考え直さざるを得なく、新しいフィットネスを探求する人の動きを観察すると、より興味深い動きが見られた。屋内外のランニングやラップスイミングはそれぞれ-44%と-88%減少した。見かけ上は、もうそれ以上運動しなくなったように見て取れる。しかし、実際の内容は真逆である。一つ覚えておいてほしいのは、大型フィットネスジムは全国で閉鎖され、その間多くのトレッドミルランナーが路頭に迷ったはずである、ということだ。バーチャルランニング(Zwiftのような外部アプリケーションとスマートウォッチが同期できるトレッドミルの反応)を見たところ、3月後半に急激な増加傾向が見られた。フィットネスジムが閉鎖する一方で、屋内のカルディオは2019年と同レベルを推移し、3月16日から3月30日までの1週間では18%増加を示した。これらすべては一つのことを示唆している。
多くの人がエクササイズを継続している。そして、トレーニング器具があろうがなかろうが、家でできる方法を探しているのだ。
この理論を後押しするように、まるで家にジムを作るかのように、家用のトレーニング器具が売り切れている小売店が多い、とメディアが報告している。さらに、ウォーキング(Garmin App.の既存プロファイル)では、3月前半から3月後半にかけて36%向上している。この増加率は、昨年の同じ春の期間に観察された18%の増加率の2倍の値である。この数字も、近隣の住民を観察することで検証できる。ソーシャルディスタンスの推奨を遵守しつつも、確かにみんな歩いている。
これら全ての現象は、ソーシャルメディアにおいて垣間見える状況とも合致する。実際に室内ルーティンの考案や共有が行われているのだ。フィットネスの小売店やパーソナルトレーナーによって、リモートトレーニングプログラムの提供も行われているという。消費者はお互いに運動がつづくよう、挑戦を促している。ガーミンですら、#10KADAYという歩数チャレンジをインスタグラムで行い、外出禁止令の影響がある中でも、フォロワーがアクティブでいられるよう手助けをしている。
身体的及び肉体的健康両面に安心をもたらすとして、ヨガにも流行が起き始めている。ガーミンウェアラブル上では、3月の前後半を比較したとき、昔ながらの習慣である「ストレッチとポーズ」を通して心と体を調和させる動きに対して11%の向上が見られた。2019年の数字も大きく上回っている。ヨガマットがリビングの床なのか芝生の上なのかはわからないが、世界中でヨガがまず最初に思い浮かぶアクティビティになりつつあることは明らかである。
ゴルフは残念ながら、お庭の芝でスイング練習を行うだけに過ぎないスポーツとなった。多くのコースがまだオープンしている一方で、3月の後半アクティビティでは、-20%の減少を計測。昨年同時期では、春の期間は共通して53%増加している。
これら3月の傾向から何を推測できるのだろうか。多くの点で、それはあくまでも解釈によると言わざるを得ない。データ上は大きな数字として成している一方で、ここで得られた見解は、現実世界のイベントとカテゴリー上の専門知識に付随する見解から得られる主観的な分析であるということを留意しなければいけない。つまり、少なくとも確信を得て最終的な結論を出すには時期尚早だ。
ガーミンのエンジニアとアナリストは継続してデータを注視し、消費者や一般の人への有益な情報のアップデートを提供し続けたい。4月の未来の数字は、30日間ステイホーム期間の影響を受けるため、おそらく世界的なパンデミックによる運動習慣への影響をより詳細にみることができるだろう。改めて振り返る予定だ。